
結腸憩室について

大腸憩室症とは
憩室とは簡単に言うと消化管にできる「落とし穴のようなくぼみ」のことです。
食道や胃、小腸にも憩室はできるのですが、ここでは一番頻度の高い大腸の憩室症について説明します。

主に便秘症などで、大腸の内圧が上がり、大腸の壁に慢性的な圧力が加わったことにより、弱い部分の壁が一部分外に飛び出た状態です。大腸の壁は便を送り出すよう蠕動運動を行なうため、筋肉の層(筋層)がありますが、この筋層が断裂することで発生します。
つまり憩室の壁には筋層がないため、本来の壁より薄くなっています。一度できてしまうと元に戻ることはありません。手術などで大腸を外から見ると風船のように飛び出しています。反対に大腸カメラで腸を中から観察すると落とし穴のような凹みが観察されます。
※大腸カメラで憩室があったからといってすぐに問題になることはそんなに多くはありません。過度な心配は必要ありませんが、ときどき下で述べるような症状・病気を引き起こすことがあります。
- 1. 憩室炎
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憩室は先程も述べたように大腸の壁に落とし穴があるようなものですから、便が一旦落ち込んでしまうと排出できず長期間留まることがあります。その便の中で細菌が繁殖すると憩室炎を起こします。
典型的には憩室のある場所でピンポイントに強い腹痛を起こしますが、細菌が原因のため、抗生物質の治療に反応することが多いです。
大きく深い憩室があったり、憩室が多発していると何度も憩室炎を繰り返したり、慢性的に常時炎症が起こることがあります。また、炎症を起こした部位の腸は周囲の組織や腹膜と癒着をすることがあり、炎症が治ってからも慢性疼痛の原因となることがあります。稀に重症化すると憩室が破れてしまい手術等の治療が必要になることもあります。
頻度は高くはありませんが、憩室炎はこじらせるとちょっとやっかいな病気です。
- 2. 憩室出血
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大腸憩室の壁は薄いため、壁を通っている血管が便で擦れたりすると、出血を起こすことがあります。自然に止血することも多いですが、大量出血により入院加療が必要な事もあります。
- 3. 憩室穿孔
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若いうちは問題ありませんが、年をとり慢性便秘症で圧力が常にかかっていると何らかの拍子に憩室が破れてしまうことがあります。大腸の壁に孔が開いてしまうと便がお腹の中に漏れてしまうため腹膜炎を起こします。
- 4. 多発憩室症
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近年、憩室症自体が増えています。食事の欧米化(野菜の少ない食事)が原因の一つと言われていますが、はっきりとした理由はわかりません。100個を超えるような多発憩室症の方も稀ではありません。個数が増えると確率的な問題で上記の1~3が起こりやすくなります。
大腸カメラで憩室を指摘された方は、もしお腹が痛い、血便がでたということがありましたら、様子をみずに消化器内科の受診をされる事をお勧め致します。その際には「憩室」をもっていることを医師にお伝えすると良いでしょう。
- ※憩室の予防法
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残念ながら完全に憩室を予防できる方法はありません。
しかしながら、「便秘」「下痢」(下痢も大腸の内圧があがるため)の頻度を減らすこと、野菜の多い食事を心がけることが重要です。飲酒が憩室発生に関係あると言われていたこともありますが、はっきりとした根拠のある論文はありません。適度な飲酒であればそこまで神経質にならなくても良いでしょう。
すでに憩室がある方、特に慢性憩室炎を繰り返していたり、多発憩室症の方は上記の限りではありませんので個々に応じた食生活が必要になります。
文責
ほその内科おなかクリニック
院長 細野 智子
- 医学博士
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化管学会胃腸科専門医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本内科学会認定内科医
- 緩和ケア講習会修了
- 日本泌尿器科学会専門医(〜平成29年)