胃カメラでわかる病気を当院の診断画像をまじえ紹介いたします
十二指腸の病気
胃食道逆流症/逆流性食道炎
正常
食道と胃の境界です。
胃食道接合部といいます。矢印までが食道の粘膜になります。
逆流性食道炎LA-M
食道胃接合部が白く濁っています。
逆流性食道炎LA-A
食道胃接合部で楔形(くさびがた)の炎症が生じています。炎症の長さが5mm未満のためGrade Aです。
逆流性食道炎LA-B
1条だけ食道の炎症が細長く口側に伸びています。長さが5mm以上あるためGrade M、A~DのうちのBの状態です。
逆流性食道炎LA-B(同じ症例)
内視鏡のLED光をBLIモードにすると炎症の部位がより明瞭に判断できます。
逆流性食道炎LA-B
食道の炎症が細長く口側に伸びています。またスキップして縦走する炎症も見られます。長さが5mm以上あるためGrade Bの状態です。
逆流性食道炎LA-C
胃酸の逆流により、ほぼ全周に食道側へ長く伸びる炎症が起こっています。
炎症の幅も広くGrade M、A~DのうちのCの状態です。
逆流性食道炎LA-C
食道の炎症が細長く口側に伸びています。また、食道胃接合部の一部で炎症の幅が広くなっており、Grade Cの状態です。
バレット食道
正常
食道と胃の境界です。
胃食道接合部といいます。矢印までが食道の粘膜になります。
ショートバレット食道
逆流性食道炎を繰り返すと、胃の粘膜が食道側に伸びていきます。(青線:本来の境界、黄矢印バレット粘膜に置き換わった食道)これをバレット粘膜と言います。このようなショートバレット食道から癌が発生する割合はごくわずかですが、バレット食道は食道癌のリスク因子ですので、定期的に胃カメラを受けた方がよいでしょう。
食道裂孔ヘルニア
正常
食道と胃の境界を胃側から見ています。
食道裂孔ヘルニア
食道と胃の境界が緩くなった状態です。前かがみの姿勢やどか食い、食後すぐの筋トレなど胃の内圧があがる状態が続くと、起きやすくなります。胃酸が食道側に上がるため逆流性食道炎の原因となります。
食道カンジダ症
食道カンジダ症
食道粘膜に小さな白苔が散在しています。カンジダはカビ(真菌)の一種ですが、健康な方にも時々みられる所見です。本症例のような軽症の場合は治療は必要ありません。重症例や免疫抑制剤の治療中、症状がある場合は抗真菌剤の内服治療を行うことがあります。
食道乳頭腫
食道乳頭腫
頚部食道にみられた3mm大の乳頭状の腫瘍です。
乳頭腫は、ときどき食道に見られる良性の腫瘍です。癌化することもまずありませんので特に心配はいりません。
食道粘膜下腫瘍
食道粘膜下腫瘍
その名の通り、「粘膜の下」に腫瘍があります。カメラ検査では表面の粘膜は周囲と変化がなくなだらかに盛り上がっているのが特徴です。
腫瘍の中身自体はカメラではわかりませんが、硬さや形状からある程度の判断が可能です。ほとんどの腫瘍は良性ですが、まれに準悪性や悪性の腫瘍がありますので定期観察が重要です。必要に応じて超音波内視鏡で精査を行います。
ヘリコバクター・ピロリ菌関連胃炎(萎縮性胃炎)
正常
胃と十二指腸の境界(矢印)付近の前庭部という場所です。均一なトーンの光沢のある粘膜が特徴です。
正常
ピロリ菌非感染の胃です。均一な肌色で光沢のある粘膜で、ヒダも太まりも消失もなく胃の拡張も良好です。
萎縮性胃炎(ピロリ菌除菌済)
正常と同じ前庭部の写真です。まだら模様で凹凸のある粘膜、腸上皮化生による白色領域を認めます。
この方はピロリ菌を数年前に除菌済みですが、このように萎縮粘膜はある程度残ってしまいます。胃がんのリスクのある粘膜ですので定期的な胃カメラ検査が大切です。
萎縮性胃炎(ピロリ菌除菌済)
同じ場所にインジゴカルミンという色素を散布しています。コントラストがつき、がん病変が分かりやすくなる事があります(インジゴでは浮かび上がってこないがんもあります)。
萎縮性胃炎(ピロリ菌除菌済)
同じ場所をBLIモードという胃カメラからでるLED光を変えて観察しています。こちらも、がん病変がわかりやすくなる事があります。本症例は胃炎のみでした。
萎縮性胃炎(ピロリ菌除菌済)
除菌が成功すると萎縮性胃炎はそれ以上進まなくなります。この方は胃全体の1/3程度の萎縮で除菌を行ったため、正常粘膜が多く残っています。粘膜の赤みもとれ、萎縮性胃炎のある方のなかでは胃がんリスクは比較的低いでしょう。
診断:萎縮性胃炎C-2(C-1→2→3、O-1→2→3の順に萎縮の範囲が広くなります。)
萎縮性胃炎(ピロリ菌除菌済)
萎縮性胃炎O-1(C-1→2→3、O-1→2→3の順に萎縮の範囲が広くなります。)の状態です。
萎縮粘膜は粘膜が萎縮して薄くなり、下にある血管が透けて見えています。
萎縮性胃炎(ピロリ菌未除菌)
萎縮した粘膜、むくみ(浮腫)があり、赤い斑点が多発しています。ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している際に認められる所見です。この方もウレアーゼ試験というピロリ菌の検査が陽性でありピロリ菌除菌を行いました。
早期胃がん
早期胃がん
ピロリ菌除菌歴のある方です。胃は全体に萎縮性胃炎を認めます。
胃角部小弯という場所に陥凹性病変を認めます。
早期胃がん(色素散布)
インジゴカルミンを散布するとがん病変の境界がわかりやすくなります。
この方は、胃カメラによる内視鏡治療を病院でおこなっていただきました。
病変は12mm×10mm、高分化型腺癌で内視鏡治療で根治しました。
早期胃がん(未分化がん)
ピロリ菌未感染の方です。胃角部大弯という場所に褪色調病変を認めます。胃角部は未分化がん(進行がんになるといわゆるスキルス胃がんになる)の好発部位のため観察は必ずBLIモードを追加し慎重に観察を行います。
早期胃がん(切除術後)
胃カメラによる粘膜切除術(ESD)を病院でおこなっていただきました。当院で行った術後1年の内視鏡写真です。治療部位が処置後瘢痕として認められます。
手術時の切除病変は7mm×6mm、病理は印環細胞がんで内視鏡治療で根治しました。
胃潰瘍瘢痕
胃潰瘍瘢痕
胃潰瘍を何回も繰り返されていた方です。胃潰瘍が治癒した際の粘膜のひきつれが2ヶ所認められます。周囲の粘膜はピロリ菌による萎縮性胃炎を認めます。
胃潰瘍は多くの場合、ピロリ菌感染症により生じますが、ワーファリン・バイアスピリンなどの血液をサラサラにする薬、ロキソニン・セレコックスなどの鎮痛剤、プレドニンなどのステロイド等の薬剤性の胃潰瘍も注意が必要です。
胃潰瘍瘢痕(胃変形例)
大きな胃潰瘍が治癒する際には、胃の変形を伴うことがあります。
胃の動きが妨げられたり、変形の場所によると食べ物が胃から排出しにくくなることがあります(幽門狭窄)。
胃粘膜下腫瘍
胃粘膜下腫瘍
その名の通り、粘膜の下、に腫瘍があります。カメラ検査では表面の粘膜は周囲と変化がなくなだらかに盛り上がっているのが特徴です。
腫瘍の中身自体はカメラではわかりませんが、硬さや形状からある程度の判断が可能です。ほとんどの腫瘍は良性ですがまれに準悪性や悪性の腫瘍がありますので定期観察が重要です。必要に応じて超音波内視鏡で精査を行います。
胃粘膜下腫瘍
胃の前庭部にあった粘膜下腫瘍です。
内視鏡医がみると、なんとなく見た目でも柔らかそうな腫瘍です。
胃粘膜下腫瘍
先程の腫瘍です。鉗子でおすと容易にぷにぷにと凹み、可動性も良好でした。この位置によくできる脂肪腫と診断しました。
血管拡張症
胃血管拡張症
胃の毛細血管が限局して拡張した状態です。
原則として治療の必要はありませんが、慢性的に出血を起こし貧血の原因となる場合は焼灼術をおこないます。
胃血管拡張症(日の丸紅斑)
血管拡張症の周りの粘膜は逆に毛細血管が少なくなるため周囲の粘膜が白く見えることがあります。
恐らく、日本でしか通用しませんが、この状態を日の丸紅斑と言います。
十二指腸球部(正常)
十二指腸球部(正常)
胃を出て、すぐにある十二指腸の画像です。胃透視(バリウム検査)でみると球のように膨らんでいる場所なので球部と呼びます。
十二指腸潰瘍瘢痕
十二指腸潰瘍瘢痕
十二指腸潰瘍は球部に好発します。
この画像では、球部の後壁(画面右側)にできた潰瘍が治る際に生じた引きつれの痕を認めます。
十二指腸乳頭部(正常)
十二指腸乳頭部(正常)
球部を抜けて十二指腸の一番奥にあるのが乳頭部です。胃カメラで観察できるのはここまでです。
乳頭は、胆汁と膵液の出口のことです。
ブルンネル腺腫
ブルンネル腺腫
分類上は粘膜下腫瘍ですが、頂部に粘液の開口部が見られ、ブルンネル腺腫と診断できます。良性の腫瘍のため特に治療の必要はありませんが経過観察が必要です。
文責
ほその内科おなかクリニック
院長 細野 智子
- 医学博士
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化管学会胃腸科専門医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本内科学会認定内科医
- 緩和ケア講習会修了
- 日本泌尿器科学会専門医(〜平成29年)