貧血について
貧血とは
血液の中の赤血球が少なくなった状態です。特に赤血球の中にあるヘモグロビンという成分が重要になってきます。
赤血球はヘモグロビンに酸素を取り込み、体内の組織に酸素を届けています。なお、赤血球の寿命は約120日間です。
- ヘモグロビン量の正常値(おおよそ)
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- 男性: 13.9~16.0 g/dl
- 女性: 11.3~15.2 g/dl
- ヘマトクリット値の正常値(おおよそ)
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- 男性: 41.4~49.2 %
- 女性: 33.4~44.9 %
薄ければ貧血症、濃過ぎれば多血症になります。
どんな症状があらわれますか?
貧血は「血液が薄い」状態ですから、極端にいえば「しゃばしゃば」「さらさら」です。血圧の性質を考えると、血管抵抗を受けにくくなりますので低血圧になります。
「貧血で倒れる」という言葉は厳密にいうと違う病気(迷走神経反射)なのですが、貧血自体も低血圧を起こし倒れやすくなります。また、普段と同じ血流では酸素が足りなくなり、より全身に酸素を送ろうと心臓ががんばるため、心臓に負担がかかります(心不全)。
貧血が進行すると下記のような症状が起こってきます。
- くらくらするめまい
- すぐに疲れる
- 息が切れる
貧血の原因は何でしょうか?
赤血球が少なくなる理由は全身の様々な病気が原因となり得ます。
- (1)赤血球を作る材料がない。
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赤血球をつくるのに欠かせないのが鉄や葉酸、ビタミンB12です。
鉄・葉酸・ビタミンB12の摂取量が足りていない可能性があります。ただし、普通量の食事をされていれば、よっぽどの偏食などでない限り稀です。
胃がんの手術をされた方などは術式によって鉄やビタミンB12の吸収障害が起こることがあります。
- (2)どこかで出血している。
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大手術や大ケガも含めて、多く出血すれば、すぐに貧血になりふらつきなどの症状がでます。
そしてどこかで「ゆっくり出血」している場合にも、赤血球の供給が追いつきません。
「ゆっくり出血」する病気で多いものは、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんや大腸がんなどの消化管による出血です。女性の場合は、月経過多症などが原因のこともあります。
ここで注意が必要なのは、「ゆっくり出血」している場合は、貧血も「ゆっくり進行」するため体が慣れてしまい、重度の貧血になるまで症状があまり出ないことがあります。
- (3)材料はあるはずなのに、赤血球がうまく作れない。
- 血液中に鉄はあるのに、慢性炎症や膠原病などでうまく利用できない場合があります(鉄の利用障害)。
- (4)赤血球が血中で壊れてしまう。
- 赤血球が自分の免疫(自己免疫)で壊されてしまう病気です。
- (5)赤血球が骨髄で作れない。
- 赤血球は骨髄で作られますが、作られる工程に異常が起こると貧血になります(白血病や骨髄異形成症候群など)。
- (6)「赤血球を作れ」という内分泌ホルモンが作られない。
- 腎臓では血液中の酸素状態を感知し、赤血球をつくるよう命令するエリスロポエチンというホルモンを分泌しますが、これがうまく作動しない場合に起こります。
どう診断しますか?
上記のように貧血は様々な場所が原因で起こります。
血液検査で、おおよその原因を絞り込むことができます。その結果によって、胃カメラ・大腸カメラや婦人科の受診、骨髄の検査など、どの検査を優先して行なっていくかを検討していきます。
どんな治療法がありますか?
- (1)鉄欠乏性貧血の場合
- 鉄剤の内服が効果的です。しかしながら長期にわたって、鉄剤を内服し、鉄が過剰になりすぎると、肝臓に鉄が沈着しヘモジデローシスという肝炎を引き起こすことがあります。鉄剤内服中は定期的な血液検査と鉄剤の量の調整が必要です。
- (2)上記以外は個別に原因となる病態を改善させます。
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- 胃・十二指腸潰瘍などからの出血・・・出血を起こしている病気の治療
- 腎性貧血・・・エリスロポエチン注射 など
文責
ほその内科おなかクリニック
院長 細野 智子
- 医学博士
- 日本消化器内視鏡学会専門医
- 日本消化器病学会専門医
- 日本消化管学会胃腸科専門医
- 日本がん治療認定医機構がん治療認定医
- 日本内科学会認定内科医
- 緩和ケア講習会修了
- 日本泌尿器科学会専門医(〜平成29年)