こんにちは。当ブログを拝見頂きありがとうございます。
5月10日に開業後、あっという間に1週間が経過致しました。まだお待たせする時間が長いことがありますが、私もスタッフも、少しずつ電子カルテや新クリニックの業務に慣れて参りました。
今しばらく温かい目で見守って頂けますと幸いです。

さて、先日鼠径ヘルニア(いわゆる脱腸)の患者さんがいらしたので、今日は鼠径ヘルニアについてご説明しようと思います。

脱腸とは股のつけ根あたりが「ポコッ」とでて、お腹の壁をすり抜けた腸や内臓脂肪を含んだ袋がでてくる病気です。股の付け根あたりを「鼠径部」といい、何かが飛び出ている状態をヘルニアというため「鼠径(そけい)ヘルニア」というのが正式な病名になります。

本来お腹の中にあるべき腸が股の付け根(鼠径部)から出てきてしまった(ヘルニア)というわけです。
イラストで見てみる方が理解しやすいでしょう。
鼠径ヘルニアは先天性(生まれつき)のものと後天性のもの(加齢によるもの)があります。

鼠径ヘルニアのイラスト1

先天性のものは、胎児の時に精巣(睾丸)がお腹の中で作られて下の方に降りていく際に、お腹の膜を引っ張っていくのですが、その通り道がうまく閉鎖しないこと(通り道が開通したまま)に由来します。発生学的な話なので難しいですね。

後天性のものは主に加齢によってお腹の筋肉の壁が弱くなることで起こります。
立ったり、咳き込んだり、トイレでいきんだりしてお腹に圧がかかると筋肉の薄い部分からお腹の腹膜が飛び出てきてしまうのです。
もともと精巣の通り道だった鼠径部が人体の構造上もっとも弱い腹壁のため、鼠径ヘルニアが圧倒的に多くなります。もし脱腸になってしまってお腹がいたくなったら、まずは横になって落ち着きましょう。
立っているとずっとお腹に力がかかってしまうため、戻るものも戻りません。
出たものは、だいたいのケースで戻せます。戻せずに痛みが出てきてしまった場合には、病院にいかなければなりません(多くのケースで元に戻してもらえますが、後日手術を勧められるでしょう)。

脱腸は幾ら筋肉を鍛えても治らないため(腹筋を鍛えようとするとお腹に圧がかかるため、逆に出てきてしまいます)、人工的なメッシュで補強して通り道に蓋(ふた)をする必要があります。しかし、悪性腫瘍などの悪い病気ではないため、年齢や出てくる頻度や症状を踏まえて手術を受けましょう。なお、先天性のものはお腹の壁が弱くなって腸が出てきたわけではないため、人工的なメッシュで補強する必要はありません。

鼠径ヘルニアのイラスト2

前立腺肥大症で立っていきまないとおしっこがなかなか出ない、便秘症でトイレではいつもいきんでしまうなどが鼠径ヘルニアの原因になり得ます。
予防できる病気ですので、無理な腹圧をかけないよう日頃から注意しましょう。