こんにちは。
ようやく暑い夏から解放されたと思ったら、もう朝晩肌寒くなってきましたね。
寒暖差激しい季節ですから服装などお気をつけください。

さて、今回はお食事と便の色の関係についてです。時折診察室でも、「ブルーベリーをたくさん食べたら便が赤かった」「赤ワインを飲んだら便が黒かった」といったお話を伺うことがあります。
どうしてこのような事が起こるのか、本当に食べ物のせいなのか?をお話ししたいと思います。

まずは、便の色に影響を与える食品中の物質として代表的なものを述べていきます。

  • ポリフェノール(総称)
  • アントシアニン
  • クロロフィル
  • カロテノイド
  • カカオ色素(カカオポリフェノール)
  • 鉄(Fe)
  • 消化されない/されにくい物質:イカ墨、備長炭などの炭、ひじき、海苔
  • 着色料

ポリフェノール

赤ワインを飲んだ後は便が黒い?~食べ物と便の色の深い関係について~ポリフェノールはよく目にする言葉ですね。実はポリフェノールは植物などの色素成分の総称なのでポリフェノールを口にしたらどういった色味が強くなるのかはこれだけではわかりません。
赤ワインやぶどうジュースはポリフェノールが豊富といわれますが、赤ブドウの「赤色」はポリフェノールの一種、アントシアニンの色です。ポリフェノールは多くの果実に含まれており、リンゴや桃にも豊富に含まれています。リンゴや桃の皮をむいた後、果実が茶褐色に変わっていくのを経験したことがあると思います。あれは果実に含まれるポリフェノールが空気にふれて化学反応(褐色反応)を起こした結果です。そのため空気に触れて果物が変色しないように塩水にさらしたりします。その褐色反応が体内で起これば、便に茶褐色の色が混ざることになります。

アントシアニン、クロロフィル、カロテノイド

アントシアニン、クロロフィル、カロテノイド アントシアニンはブドウやブルーベリーの皮の色です。しかし、実際には気づかないだけで様々な植物に存在しています。例えば真っ赤な紅葉。あれはアントシアニンの赤色なのです。秋になり葉っぱの緑成分(クロロフィル)が分解された結果、アントシアニンが残留して赤色が目立つようになります。クロロフィルというと馴染みがないと思いますが、「葉緑素」ならどうでしょうか?緑の植物は、この葉緑素で光合成を行うことによってエネルギーを作りだしています。つまり緑色の野菜、ホウレン草やパセリなどに多く含まれています。
紅葉は紅葉の赤色だけでなく、イチョウやポプラの黄色もありますよね?あれはカロテノイドの色です。紅葉と同じくクロロフィル(葉緑素)が分解された結果、黄色が目立つようになったのです。カルテノイドはニンジンやカボチャなどの緑黄色野菜に多く含まれており、みかんなどの柑橘類も代表的です。みかんを食べすぎて手が黄色くなったことはありませんか?つまり、カロテノイドは黄色です(厳密にはカロテノイドも総称でその中には「リコピン」など赤色もあったりしますがここではわかりやすく黄色としておきます)。

カカオ色素(カカオポリフェノール)

カカオ色素はその名のとおり、カカオ由来の色素でチョコレートやココアに含まれます。カカオ色素は分解されにくく、染着性(色を染める力)にも優れているため、ソーセージや菓子パンなどの着色料としても使用されています。カカオ色素はチョコレート色です。

 

これらの物質がヒトの腸内でどのような色になるかをまとめると、

  • アントシアニン(赤紫)
    ブルーベリー、ぶどう、紫いも、赤しそ
  • クロロフィル(濃緑)
    ホウレン草、パセリ、小松菜、クロレラ
  • カロテノイド(黄色)
    ニンジン、カボチャ、みかん
  • カカオ色素(濃茶色)
    チョコレート、ココア

のようになることが予想されます。

 

さて、いつものように長くなりましたが本題はここからです。
便の色は通常、胆汁に含まれるビリルビンに強く影響を受けます。ビリルビンはオレンジ色で、腸内のpHや腸内細菌の影響を受け、最終的に便になる頃には茶色になります。そこに上記の色素が混ざることになるのです。

理論上は、上記の食べ物を全部食べると「赤紫」と「緑」、「黄色」、「濃茶色」が混ざれば、まっ黒な便が出来上がります。しかし、食べ物に含有されている色素量はそこまで多くないので実際はそれほど黒くはなりません。ただし色素含有量の比較的多い「ぶどう」、しかも濃縮されている赤ワインやぶどうジュースを飲むと便が黒っぽくなります。
なお、イカ墨や竹炭など消化されずにそのまま便にでる食品を食べれば、便は黒くなります。

鉄(Fe)

なお、鉄(Fe)に関しては食品由来の変色とは意味合いが異なるので分けて説明します。
胃潰瘍や胃がんなどにより出血をすると便が真っ黒になります。医学的にはタール便と呼びますが、これは血液にたくさん含まれる鉄(Fe)が原因です。

鉄は消化吸収されなかった場合、硫化鉄(FeS)として便に排出されます。この硫化鉄は黒色です。出血でなくても、鉄を含むお薬やサプリメントを摂取しますと、腸内で吸収されなかった鉄分は硫化鉄としてそのまま便に排出されます。よって、鉄剤/鉄サプリを飲めば便は真っ黒になることが多いです。
なお、鉄の取りすぎは体に悪く、別の病気(鉄過剰症:ヘモクロマトーシス)になりますので、鉄欠乏性貧血以外の方は、サプリはほどほどにしておきましょう。
ホウレン草は鉄を多く含む代表的な野菜ですが、クロロフィル(緑色)も多く含むため、場合によっては黒っぽい便の原因になります。ただし、多量に食べないとならないでしょう。

なお、便潜血検査は鉄に反応しない免疫法が採用されているため、便が何色でも結果に左右されません(便潜血についてもご覧ください。便の色がいつもと違う場合には、最近何を食べたか少し考えてみるといいかもしれません。血便を見逃さないためにも便の観察は大切です。

今回は、食べ物と便の色の関係についてご説明しました。しかしながら、食べ物のせいで便が赤い/黒いと決めつけず、消化管(胃・大腸など)の出血が無いかの確認もやはり大事です。便の色がおかしいなどあれば、ぜひご相談くださいね。

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