こんにちは。
もう2月ですが、今年1回目のブログ更新です。
昨年もでしたが、今年も年明けから第8波による新型コロナ、そしてインフルエンザA型の流行により忙しく…言い訳ですね。

 

 

さて、今回は「ヘリコバクター・ピロリ菌」についてです。
ピロリ菌は胃に住んでいて、慢性胃炎(萎縮性胃炎)・胃潰瘍、そして胃がんの原因になることがわかっている細菌です。胃がんは例外もありますがピロリ菌が原因で起こります。
長期間(数十年)、ピロリ菌に感染をしてしまってからでは、ピロリ菌を除菌しても(除菌しないよりはもちろん良いのですが)胃がんの発生率が高いまま経過してしまいます。
ですので、症状のない時から胃がんの一次予防のために、「早期発見」「早期治療」が望ましいのです。

ピロリ菌の診断方法・除菌方法など詳しくは、当院「ヘリコバクター・ピロリ感染症」のページにも載せておりますので、今回は主に「ご家族にピロリ菌が見つかった場合何をすべきか」についてご説明しようと思います。

 

 

夫や妻、パートナーがピロリ菌だったら?


基本的に、安心してもらって大丈夫です。ピロリ菌は免疫がまだ完成していない小児期に感染した場合に持続感染を起こします。つまり、5歳以下のうちに感染する事が99%以上ですので、大人になってから食事を共にしたり、キスから感染することはまずありません。

 

両親や兄弟がピロリ菌だったら?


あなたもぜひ一度ピロリ菌の検査を受けられることをお勧めします。
幼少期を共に過ごした方にピロリ菌が見つかった場合はあなたにもピロリ菌が存在する可能性は十分あります。先ほど述べたように、お子さんの時にお箸やスプーンの共有などから家庭内感染を起こしていたかもしれないからです。

 

自分がピロリ菌陽性だった場合に自分の子供はどうしたらいい?

 

小児に関しては残念ながら現時点では、決まった指針がありません。
日本では、「日本小児栄養消化器肝臓学会」と「日本ヘリコバクター学会」が各々独自の指針をだしていますが、その内容は正反対です。
「日本小児栄養消化器肝臓学会」は、小児期にピロリ菌を除菌したほうが成人してから除菌するより胃がんになりにくいという証拠がないため、倫理的問題からも無症状のお子さんへの検査・除菌療法に反対しています。
逆に「日本ヘリコバクター学会」は小児期に早く除菌したほうが胃がんを予防できるという証拠はなくても理論上は自明であろうから、中学生時点での自治体等による無症状のお子さんの検査を推奨しています。除菌に関してはやや弱めに推奨しています。

 

 

さて、私は「日本ヘリコバクター学会」の会員ですが、個人的には、症状がなければ大学生以上で検査で良いだろうと考えております。
理由はたくさんありますが、まず、ピロリ菌除菌が結局ある程度成長してからでないと服薬しにくいからです。


小学生は体格差が大きく、ピロリ菌薬物治療の用量設定がそもそもありません。ピロリ菌治療は一般的に多量の抗生剤を2種類服用するため安全面の懸念がぬぐえません。


中学生は、自治体によっては積極的に検査・除菌を行っているところがあります。関西だと大阪府高槻市はそうですね。ピロリ菌の検査は尿や便で行えますから、検査自体を行うことは体に侵襲がありません。ちなみに、保険診療上は胃カメラをしてからでないとピロリ菌検査はできませんので(大人も同様です。人間ドックなどで検査される際は胃カメラは受けなくても大丈夫です)、ピロリ菌検査のみをされる場合は自費診療になります。
そして、ピロリ菌が陽性であった場合は、15歳以上、つまり中学3年生以上での除菌が一般的です。何故なら、現在のピロリ菌除菌療法の保険診療が15歳以上を原則として認可されたからです。独自の抗生剤・用量の組み合わせで15歳未満にピロリ菌除菌療法を推奨している自治体もあります。こちらも自費診療になります。

次に、中学生・高校生・大学生で除菌をした場合、将来的に胃がんの発生率に差があるか、は現時点ではわかっていません。そんな早い時期に除菌をした人が今まで居なかったからです。ちなみに、除菌年齢が40歳と70歳を比べるとその後の胃がん発生率の差は結構あります。

 


そもそも、ピロリ菌がなぜ胃がんの原因になるかというと「ピロリ菌持続感染」→「胃粘膜の慢性炎症」→「慢性炎症(萎縮性胃炎)が広がる」→「慢性胃炎の起こっている領域から胃がんが発生する」という機序で起こります。

※左右にスクロールさせてご覧ください。

20歳くらいまでは、慢性胃炎の範囲はごく初期に限られるので中学生であれ20歳であれ、ピロリ菌が原因で胃がんを発症する割合は限りなく0%に近いです。その状態で除菌できれば、除菌時期が中学であれ20歳前後であれ恐らくはずっと胃がん発生率は低いままで推移するでしょう。ですので、わざわざリスクを冒してまで小学生・中学生で除菌するよりは、あくまで個人的には体格・成長が落ち着いた(高校生~)大学生くらいでピロリ菌検査をされるのでも遅くはないかと考えております。

もちろん、貧血がある、黒色便がでている等症状がある場合には積極的な検査や除菌の検討をされることをお勧めいたします。


相変わらず長いブログです。よく患者さんに聞かれるけれど、なかなか診察室ではお話ししきれないことを書いてみました。
参考になれば幸いです。

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