こんにちは。
なんとか、食中毒シリーズの後編を夏のうちに書くことができました。
今回は、カンピロバクター(キャンピロバクター)腸炎についてのブログです。

 

カンピロバクター腸炎は、カンピロバクターという菌に汚染された食べ物や水を摂取することで起こります。生卵や牛乳、ペットからの感染の報告もありますが、ほとんどが生肉か加熱不十分な肉で、鶏>牛・豚肉です。こちらの詳細はパート1~消化器内科医として「鳥刺し・鳥のたたき」に思うこともご覧ください。

 

カンピロバクターに汚染された生肉を食べたらどうなる?

カンピロバクターに汚染された食べ物を食べた場合、比較的少ない菌量であっても感染・発病すると言われています。しかしながら成人では結構不顕性感染(症状がでない)の方もおられるので、3人が同じ汚染物を食べても1人だけ発症した…なんてこともよくあります。ただし、お子さんや高齢者の方は発症する割合が高くなります。

 

カンピロバクターは食べてから実際に発症するまでの期間(潜伏期)が長いのが特徴で、2~3日くらいが平均ですが、長いと10日くらい発症までにかかることがあります。ですので、どの食事が原因になったのかわからない事もあります。

 

食中毒 パート2~カンピロバクター腸炎 1.カンピロバクターに汚染された生肉をたべちゃったらどうなる?

症状は、下痢・腹痛・発熱の頻度が高いです。下痢は水下痢ですが血便を伴うことは少なく、腹痛もそこまで強くないことが多いです。とにかく水のような下痢が続き、嘔吐を伴うことは少ないです。発熱の無い方もおられますが、40度の熱が持続する方もおられます。
そしてやっかいなことに、下痢が起こる前に、発熱や頭痛・関節痛などの症状が起こることがあり、この場合はインフルエンザや新型コロナウイルスとの鑑別は症状だけでは困難です。

治療はどうするの?

ほとんどの方は数日で自然によくなります。しっかりと下痢で失われた水分・ミネラルを補って、ある程度下痢という行為で菌を出し切ってしまえば治ります。
吐き気がないのでご飯を食べられる方がいるのですが、大腸が便を作ろうとして負担が増えてしまうためゼリーや簡単なうどん・おにぎりなどがお勧めです。便の形状が水様便から泥くらいまで固まってきたら通常の食事に戻していきましょう。

 

食中毒 パート2~カンピロバクター腸炎 2.治療はどうするの?ガイドライン上、軽症の場合は抗生剤は原則必要ないとなっていますが、実際の現場ではカンピロバクター腸炎を疑う患者さんを診た場合には、抗生剤を処方する事が多いかと思います。なぜなら基礎疾患のない健康な方でも稀に敗血症・腹腔内膿瘍にまで悪化する方がいたり、自然治癒に時間がかかり数週間自身の便に排菌し続けることがあるからです。

 

腹痛が強かったり、血便・高熱がでている、もしくは明らかに食中毒を疑う場合は一度医療機関を受診することをお勧めいたします。カンピロバクターだけではなく、サルモネラ・エルシニア・O-157(腸管出血性大腸菌)といった他の菌による腸炎の可能性ももちろんあり得ますので、診察を受けられる方が良いでしょう。

下痢も熱もすっかり治りました。それでも注意が必要!

カンピロバクター腸炎は治ってからもギラン・バレー症候群という神経系の病気を発症する事があります。カンピロバクター腸炎後1000人中1人が発症すると推測されています。ギラン・バレー症候群はウイルスやワクチンが原因となり発症することもあるのですが、カンピロバクター腸炎後に起こるものは、感染により体内で作られた抗体が原因となることが分かっています。私は神経内科医ではないので詳細は割愛致しますが、神経障害の後遺症が残ったり、最悪の場合命に関わる病気ですので注意が必要です。
他にも、ギラン・バレー症候群のように自己免疫が原因で起こる反応性関節炎(ライター症候群)や、過敏性腸症候群を発症する事があります。

 

カンピロバクター腸炎は予防が可能な病気です。
1にも2にも「お肉はよく加熱して食べよう!」ですね。

 

食中毒 パート2~カンピロバクター腸炎 3.下痢も熱もすっかり治りました。それでも注意が必要!

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