こんにちは。
9月になりようやく少し朝・晩が涼しくなってきました。
今回のトピックスは、久しぶりに「おなかクリニック」らしく「便潜血検査」についてご説明いたします。
人間ドックやがん検診で検査を受けられたことのある方も多いかと思います。
便潜血が陽性なら、実際のところどれくらい本当にがんはあるのか?など述べていますので是非参考にされてください。

どんな検査ですか?

便潜血検査

大腸がん検診の際に一般的に行われる検査方法です。
便の中に血液が混じっていないかを調べるもので、目に見えない微量な出血も検出することが可能です。便潜血が陽性であれば、消化管のどこかで出血している可能性があります。感度が比較的高く、簡便な検査のため大腸がん検診に採用されています。日本では2日法が一般的で、別の日に採取した検便2回分で検査を行います。2回中1回でも潜血が検出されれば、便潜血陽性と判定されます。2日法が採用されているのは1日だけでは、検出率(感度)が下がるためです。

2回中1回なら出血が軽いという訳ではありませんので注意しましょう。

大腸がん検診はしたほうが良いのでしょうか?

日本では、大腸がんは上昇傾向で、現在ではがんの中で最も罹患数が高くなっています(国立がん研究センター がん統計より引用)
原因の一つとして食事の欧米化が推測されています。

● がん罹患数の順位(2019年)

※左右にスクロールさせてご覧ください。

 1位2位3位4位5位 
総数大腸乳房前立腺大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸3位、直腸6位
男性前立腺大腸肝臓大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸4位、直腸5位
女性乳房大腸子宮大腸を結腸と直腸に分けた場合、結腸2位、直腸7位

元データ:e-Stat(全国がん登録)

また、40歳を境に急激に罹患率が上昇します(国立がん研究センター がん統計より引用)

● 年齢階級別罹患率【結腸 2018年】

※左右にスクロールさせてご覧ください。

年齢階級別罹患率【結腸 2018年】

大腸がんは医療の進歩により早期がんであれば95%以上は完治が望めるようになっており、また進行癌であっても完治を目指せる病気になりつつあります。そのため国としても大腸がんの早期発見に便潜血検査を推奨しており、多くの自治体には助成金制度があります。

便潜血陽性だったら「大腸がん」があるのでしょうか?

2017年に日本対がん協会が行った大腸がん検診の結果では(※1)、受診者数253万7,352人のうち、便潜血が陽性だった人は15万人4,004人(約6%)でした。この中で、実際に精密検査を行うために病院を受診した人は10万5,816人(68.7%)で、精査の結果がんが発見された人は4,400人でした。
つまり、便潜血陽性で精査を受けた場合、約2.86%の人に大腸がんが見つかったということになります。

では、精査を受けた人のうち大腸がんと診断されなかった人は、何もなかったのでしょうか?癌研究会総合検診センターにおける4,819人の調査結果では、約19.3%の方に大腸ポリープが見つかっています(※2)。大腸ポリープは良性ですが、大きく成長する際にがん化する危険がありますので、早い段階で発見・切除を行っておくことが大切です。便潜血陽性の判定が出た場合には放置せず、大腸カメラ検査を受けた方がよいでしょう。

大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)

引用:
※1 大腸がん検診の意義と目的 日本対がん協会 Japan Cancer Society
※2 免疫学的便潜血検査陽性者,陰性者の疾患の特徴Progress of Digestive Endoscopy .63巻 (2003)2号

ワンポイント
では、便潜血陰性だったら安心しても良いのでしょうか?

便潜血陰性の場合、進行大腸がんがある可能性はかなり低いと考えて良いでしょう。
しかしながら、大腸ポリープは便潜血が陽性とはならないため便潜血でポリープの有無は確認できません。
先ほど引用した文献(※2)によれば、むしろ陰性者の方が有病率は高く30.3%であったと報告されております。ただし、9mm以下のポリープが多いという結果でした。大腸ポリープを切除しておくことで大腸がんを未然に防ぐことができます。早い段階で発見・切除を行っておくことが大切です。
日本消化器内視鏡学会は40歳で一度は大腸カメラを受けるよう推奨しています。

※ 免疫学的便潜血検査陽性者,陰性者の疾患の特徴Progress of Digestive Endoscopy .63巻 (2003)2号

当院では苦しくない大腸内視鏡検査を行っております。
大腸がんがご心配な方、検診で便潜血陽性と診断された方などお気軽にご相談ください。

大腸カメラ
(下部消化管内視鏡検査)
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